コンテンツマーケティングにおいて、「どの施策が成果につながっているのか?」を明確に把握することは、今や担当者にとって不可欠な課題です。

しかし、実際にはアクセス数や検索順位、CV数といった断片的なデータに頼りながら“なんとなく”KPI(重要業績評価指標)を設定しているケースも少なくありません。

そこで今、注目されているのがAIによるコンテンツパフォーマンスの予測とKPI設計の最適化です。

今回は、AIを活用したパフォーマンス予測とKPI設計の最適化について解説します。

 

AIによるコンテンツパフォーマンス予測が必要な理由

コンテンツマーケティングにおいて、AIによるパフォーマンス予測が必要となってくるのにはどのような理由があるのでしょうか?

 

コンテンツマーケティングは短期的に運用してもすぐに効果が表れにくいことから、長期的な運用を前提としており、継続して効果測定を行う必要があります。

しかし、コンテンツマーケティングではそもそも目標を数値化させるのが難しい傾向にあります。

例えば「ユーザーからの評価を高める」「コンテンツの質を高める」などの主観的な目標はあるものの、これをどのように数値化すれば良いか悩んでしまう人は多いです。

また、今行っている施策が本当に成果につながるのか答えるのも難しい傾向にあります。

このような状況で、担当者の経験則や過去のデータだけに頼ったKPI設計をしてしまうと、見込み違いの施策にリソースを投じてしまったり、成果が出る前にコンテンツを打ち切ったりする可能性があります。

そこで注目されているのが、AIによるパフォーマンス予測です。

AIは過去のアクセスデータや検索順位、ユーザーの行動などに基づいて、トラフィックの伸びしろや成果につながる可能性が高い構成・トピックなどを予測することができます。

また、パフォーマンス予測によって、コンテンツ施策の精度が向上したり、リソース配分を最適化させたりすることにもつながります。

 

 

AIのパフォーマンス予測を取り入れるメリット

コンテンツマーケティングにAIのパフォーマンス予測を取り入れると、どのようなメリットが得られるのでしょうか?

ここで3つのメリットをご紹介します。

 

先回りの施策立案が可能になる

これまでのコンテンツマーケティングは、コンテンツが公開されてから成果が出るのを待ち、その結果に基づいて改善していくという後追い型のPDCAが主流でした。

しかし、AIのパフォーマンス予測を取り入れれば、検索需要や類似する成功パターンなどを分析でき、コンテンツを公開する前から戦略設計が可能です。

これで時間とコストのムダが抑制され、成果につながりやすい施策に集中しやすくなります。

 

KPI設定の精度が向上する

AIはこれまでに蓄積された過去のデータや検索トレンド、ユーザーの行動を学習することで、適切なPVやCTR、CVRといった指標の目標値を提示できたり、シーズンや業界に応じた変動傾向を予測できたりします。

こうした予測結果に基づいてKPIを設定すれば、精度も向上して成果につながる可能性が高いです。

適切なKPIを設定できると、例えば目標値が高すぎてチームメンバーが疲弊してしまったり、逆に低すぎて成果が出ているのに評価につながらなかったりするなどの問題も回避しやすくなります。

 

ヒットする可能性の高いネタや構成を提案してくれる

AIは既存の検索トレンドや競合コンテンツ、ユーザーの検索意図を分析し、今後ニーズが高まりそうなテーマや成果が出ている構成・表現パターンなどを提案してくれます。

この結果を活用することで、コンテンツの内容を充実させることができ、新規施策の起点とにもなり得るでしょう。

特に少人数でコンテンツ制作を手がけている場合、ネタ切れを起こしやすいですが、AI予測を活用することで生産性の向上にもつながります。

 

 

パフォーマンス予測にAIを導入する際の注意点

パフォーマンス予測にAIを活用する場合、以下の点に留意する必要があります。

 

精度を高めるにはまとまったデータが必要

AIによるパフォーマンス予測の精度を高めるには、ある程度まとまったデータが必要です。

このデータが多ければ多いほど精度の高い予測も可能となります。

そのため、AIでパフォーマンス予測をするには、前もって予測に必要なデータを取得し、AIに読み込ませなくてはなりません。

また、AIが予測しやすくなるように、ある程度データを整理・統合する必要があります。

つまり、AIによるパフォーマンス予測によって生産性が向上できる部分もありますが、事前の準備に一定の工数がかかってしまうことを理解しておきましょう。

 

データが間違っていれば予測も不正確になる

AIはパフォーマンス予測を行うために、学習したデータを活用します。

この予測元になるデータが間違っていた場合、正確に予測することができなくなってしまいます。

そのため、データ収集を行う際には正確なデータかどうかを確認することが大切です。

 

絶対に当たるとは限らない

大量のデータをAIに学習させたとしても、絶対にその予測が当たるとは限りません。

あくまでも予測ということを理解した上で、慎重にコンテンツマーケティングの施策に活かすことが重要となってきます。

例えば、流行の移り変わりなどの影響で最新のトレンドに対応できないことも多いです。

あまり精度が高くない場合には、学習データの量と質を見直し、AI自体の更新も行うようにしましょう。

 

 

KPIを効果的に設定するためのAI活用ステップ

コンテンツマーケティングにおいて適切なKPIを設定するために、どのようにAIを活用すれば良いのでしょうか?

ここで、KPIを効果的に設定するためにAIを活用するステップを解説します。

 

過去のデータをもとにAIで傾向を分析する

AIは過去に公開した記事やLPのパフォーマンスデータ(PV、CTR、滞在時間、CV率など)を分析し、以下のようなパターンや相関関係を抽出します。

 

「このトピックは公開から30日後にアクセスがピークになる」

「○○のキーワードを含む記事はCV率が平均より高い」

「構成に○○を含めた記事は読了率が向上する」

 

こうした分析結果に基づいて、「今後のコンテンツにどの程度のパフォーマンスを期待できるか」が定量的に把握できるようになります。

 

KPIの妥当性をAIで検証・調整する

AIは、設定したKPIが実現可能かどうかを、統計的予測やシミュレーションで検証することも可能です。

例えば、該当する記事に対して公開から3ヶ月で10,000PVを達成できるのは現実的か、CTRを5%以上に設定するのは妥当か、などの問いに対し、過去の傾向や類似するコンテンツと比較した上で、適正なKPIを提示できます。

これにより、無理のある目標や根拠のない期待を排除した上で、現実的なKPIを設定することが可能です。

 

コンテンツの特性や目的に合わせてKPIを設計

AIは、以下のようなコンテンツの特性や目的に応じたKPI設計もサポートできます。

 

・ブログ記事:PV、検索順位、流入キーワード数

・LP:CVR、直帰率、サイト滞在時間

・ホワイトペーパー:DL数、読了率、CTAクリック率

・SNS連携:シェア数、エンゲージメント率 など

 

こうした分類をAIが自動で判断し、それぞれに最適な評価指標を提案することで、KPI設計の属人化を防ぐことができます。

 

目標達成までの進捗状況をモニタリング

AIはKPIを設定した後も、定期的にその進捗状況を監視し、KPIの達成度が想定通りか、現在の伸び率で目標を達成できるかをリアルタイムにフィードバックしてくれます。

また、途中で改善すべきポイントがあれば、改善提案をすることも可能です。

例えば、「CTRが目標に届いていないが、タイトル変更で改善する可能性がある」といった示唆を、根拠ある形で提供してくれます。

 

 

KPI設定で失敗しないためには?

KPI設定で失敗しないためには、以下の点に注意することが大切です。

 

KPIをたくさん設定しすぎない

KPIの設定数に上限はないものの、施策によってはたくさん設定しすぎてしまうとリソースが分散されてしまい、KPIの達成まで時間がかかってしまう恐れがあります。

一般的にはKGIの達成に向けて3~5個のKPIが適していると言われています。

ただし、最初から適切なKPIを3~5個設定するのは難しいため、たくさん設定したとしても運用しながら絞り込んでいき、最終的に3~5個になるようにすると良いでしょう。

また、AIのパフォーマンス予測による結果も活用することで、より最適なKPI設定につながります。

 

KPIのリードタイムも考慮する

KPI設定において、リードタイムが考慮されていないケースがあります。

企業によってはファネル型の歩留まりをKPIにそのまま活用しています。

しかし、歩留まりを算出する方法にはリードタイムが考慮されていないケースがほとんどで、その結果KPI自体にもリードタイムが反映されていないことになります。

KPIにリードタイムが考慮されていないと、例えばコンバージョン自体は目標を達成しているのに、売上につながったかどうか結果が判明するのが翌月以降で、KPIが未達になってしまいます。

このような事態を回避するためにも、KPIを設定する際にはリードタイムも考慮することが大切です。

特にリードを獲得してから一定の時間がかかりやすいBtoB向けは、必ずリードタイムも含めてKPIを設定するようにしましょう。

 

 

今回は、コンテンツマーケティングにおけるAIを活用したパフォーマンス予測とKPI設計の最適化について解説してきました。

コンテンツマーケティングの効果をより引き出すためには、ユーザーの行動を先回りしてニーズに応えることも重要となってきます。

さらに競争が激化する中で、成果を出し続けるコンテンツマーケティングを実現するためにも、AIによる予測と設計をいかに自社の仕組みに取り込めるかが重要なカギとなります。

長期的に取り組む必要があるコンテンツマーケティングだからこそ、AI技術を取り入れて効果の最大化を図っていきましょう。