商品を購入する時、サービスを利用する時など、口コミを参考にする方は多くいます。
しかし、口コミといっても様々な種類があります。
良い口コミもあれば悪い口コミもあり、匿名で自由に口コミを投稿できるため、中には誹謗中傷に値するような悪質な口コミも見受けられます。
そのため、会社や店側にとっては社会的信用を大きく落としてしまい、損失につながるケースがあるため注意が必要です。
そこで今回は、名誉毀損につながる口コミについて解説すると共に、悪質な口コミを放置するリスクや口コミの削除依頼をする方法などをご紹介していきます。
口コミは名誉毀損になる?
口コミは内容によって名誉毀損に当たるケースと当たらないケースがあります。
それぞれの状況を解説していきましょう。
名誉毀損につながる条件とは
口コミが名誉毀損につながるのは、以下の3つの状況に当てはまる場合です。
・社会的な評価を下げる可能性がある
・具体的な事実を示している
・公然とされているもの
口コミによって会社や店が誹謗中傷を受け、実際に客足が減った場合や社会的評価を下げる恐れがある場合は、名誉毀損に当てはまります。
会社の評判を落とすことが目的で誹謗中傷に該当するような内容を投稿する他、悪意に満ちた表現で会社に対して評価する場合などが当てはまります。
例えば、ある企業に勤めている特定の人物を名指しして不倫をしている、過去に暴力事件を起こした、セクハラがひどいといった内容の口コミは、社会的評価を下げる内容だと判断されやすいです。
また、名誉毀損では成立要件に事実の摘示が含まれています。
具体的な事実を示している行為となり、口コミ内容の真意が確認対象となり得るかがポイントです。
例えば、企業に勤めている人物に対して「新人にセクハラをしている」という口コミがあれば、セクハラ行為の有無が事実確認の対象です。
一方、「人を見る目がいやらしくて気持ちが悪い」といった口コミは、あくまでも個人の主観なので事実確認の対象にはなりません。
また、公然とされているかについても名誉毀損につながる条件です。
公開され、誰でも閲覧できる状態が該当するため、SNSや掲示板などに投稿された口コミが対象です。
そのため、特定の個人に対して誹謗中傷メールを送った場合は、メールを受け取った側のみ確認できるので、名誉毀損にはあたりません。
名誉毀損にあたらない口コミ
悪質な口コミは、社会的評価を低下させる事実を摘示しているかが重要なポイントです。
これにあたらなければ、名誉毀損にはあたりません。
例えば、「このお店のサービスは自分には合わなかった」という口コミは、単なる意見だと判断されます。
事実を摘示しているとは評価できないので名誉毀損にはなりません。
名誉毀損には、特例として違法性阻却事由があります。
次の条件を満たしていれば名誉毀損は成立しないと判断されます。
・公共の利害に関するもの
・公共の利益になるもの
・摘示された事実が真実であると証明できる
・人を攻撃する意見評論としての域を脱していない
これらが認められれば名誉毀損は成立しません。
悪質な口コミを放置するリスク
企業が悪質な口コミを放置すると、どんなリスクがあるのでしょうか。
企業イメージが悪くなる
口コミは企業のイメージと直結するものです。
イメージが悪い企業の商品やサービスを利用したいと考える顧客は少ないと考えられます。
口コミの内容が真実なのか虚偽なのかは見た人では判断できません。
しかし、証拠がなくても悪評が広まってしまえば信じてしまう人は多いはずです。
その結果、様々なリスクを伴うので注意が必要です。
売上や顧客が減少する
企業イメージが悪化すれば売上の減少や顧客離れが予想できます。
高い性能の商品や良いサービスを提供していたとしてもイメージが悪ければ「あの企業のものは使わない」と不買運動がおこる可能性もあります。
近年ではSNSを活用して不買運動が拡散されるケースも多く、例え口コミが真実ではなくても大きなダメージを受ける可能性があります。
取引先からの信用が低下する
ネット上の口コミによる影響は売上や顧客だけではありません。
取引先からの信用を低下させる恐れもあるので、取引の停止や取引数の減少といった問題を引き起こす可能性があります。
事業内容や運営状況に関する悪評が広まれば、倒産リスクを考えて取引を拒否されてしまうケースもあります。
悪評が真実でなければ大丈夫だと考える方もいますが、消費者が信じてしまえば影響は取引先にも及ぶ恐れがあります。
その結果、取引停止の判断を下す可能性もあるので注意してください。
就職者・転職者の減少
就職先や転職先を探す際、口コミを見て判断する方も多いです。
就職や転職サイトでは従業員による口コミが掲載されているケースもあり、悪評が多ければ応募したくないと考えるのが一般的です。
「サービス残業が多い」「有給を取得できない」「従業員同士の仲が悪い」「パワハラが蔓延している」といった口コミが多ければ就職・転職希望者の減少につながってしまいます。
悪質な口コミを削除する方法とは
ここからは、悪質な口コミが投稿された際の対処法を解説していきます。
削除依頼フォームの活用
まずは、悪評が書き込まれたサイトに対して削除依頼を行ってみてください。
各サイトでは、削除依頼の問い合わせ窓口を設けている場合が多いです。
必要な内容を入力して送信するだけで削除依頼を行えます。
スムーズに進めば数日~数週間ほどで削除されるでしょう。
しかし、依頼すれば必ず削除されるわけではありません。
名誉毀損に該当するような投稿は、多くのサイトにおいて利用規約によって禁じられています。
違反している旨をまとめ、削除を求めれば認められる可能性がありますが、問題ないと判断されれば削除されずに残ったままとなります。
その場合は、違う方法で削除しなければいけません。
送信防止措置手続きでの請求
削除依頼フォームでの削除依頼に対応してもらえない場合は、送信防止措置手続きを活用して削除請求をしてみましょう。
プロバイダ責任制限法第3条にもとづく手続きとなっており、所定の書類をサイトの運営者に送付することで口コミの削除依頼ができます。
送信防止措置手続は、被害を受けた本人の他、弁護士による代理手続きも可能です。
依頼書を受け取ったプロバイダは、対象となる口コミをプロバイダ責任制限法に基づいて削除が適切であるか審査します。
その後、適切だと判断した場合は、発信者に対して削除しても良いか意思確認を行います。
反論があった場合でも、プロバイダ側が削除は相当だと判断していれば、そのまま削除することが可能です。
裁判所への仮処分申立て
サイトの管理者に削除申請を依頼しても応じてもらえず、送信防止措置手続きをしても対応してもらえない場合は、裁判所に対して仮処分の申立てを行うことができます。
その場合、民事訴訟で削除請求を行うことが可能ですが、民事訴訟をすると3ヶ月~1年以上の期間を要する可能性があります。
そのため、口コミが削除されないままネット上に残り続けるので、削除完了が長引くほど多くの人の目に留まるリスクがあります。
他の掲示板やSNSにまで拡散してしまえば、さらなる弊害が予想されるでしょう。
そんな時、削除の仮処分を申立てれば1ヶ月~3ヶ月ほどで削除命令が下される可能性があり、民事訴訟と比較すると被害拡大を抑えられる仕組みです。
裁判所が下した処分となるため、ほとんどのサイト運営者が削除に応じてくれ、命令に応じない場合には強制執行することも可能なので安心です。
悪質な口コミを書いた人への対処
悪質な口コミを書いた人に対しては、損害賠償請求や刑事告訴を行うことが可能です。
しかし、その場合は投稿者を特定する必要があります。
流れを解説していきましょう。
賠償請求
悪質な口コミを投稿した人に対して損害賠償を請求したい場合は、書き込みをした人の特定から行います。
①サイトに対して投稿者のIPアドレスなどの開示を求める
②開示を受ける
③IPアドレスを元にして投稿したプロバイダを特定する
④プロバイダに対して発信者情報開示請求を行う
2022年10月からは、改正プロバイダ責任制限法によって「発信者情報開示命令」といった手続きが創設されています。
上記のように2つの事業者に対して手続きを行うのではなく、1回の手続きで発信者の名前や住所などを開示できる仕組みです。
そのため、より短い期間で開示請求が実施できるようになりました。
そして身元が判明したら名誉毀損で訴訟を起こします。
慰謝料の他に営業に与えた損害額、調査費にかかった費用の請求が認められるケースもあります。
名誉毀損の場合、法人であれば50~100万円ほどが相場となっています。
刑事告訴
被害を受けた場合、刑事告訴をすることも可能です。
加害者に対して刑事処罰を与えてほしいときに警察署に対して告訴状を提出することで操作が開始されます。
悪い口コミを書き込んだ人物が特定できていない場合でも告訴状を提出できますが、特定してから提出するケースが一般的です。
また、告訴は書き込みをした人物を特定した日から6ヶ月が時効です。
そのため、特定した後には早急に手続きに移る必要があります。
告訴状が受理されると警察や検察による捜査が実施されます。
警察が起訴・不起訴を決め、起訴になれば刑事裁判によって刑事処分が決定する仕組みです。
不起訴になれば刑事処罰はありませんが、前歴は残ります。
今回は、名誉毀損にあたる口コミについて解説してきました。
会社や店に対しては様々な口コミが投稿されるはずです。
中には悪意のある書き込みもあり、事業継続に影響を与えるものもあります。
放置してしまえば様々なリスクがあるので、早急に対処する必要があります。
専門家でもある弁護士に相談をすれば、様々な手続きのサポートをしてくれます。
スムーズに対処するためにも、早い段階で相談してみましょう。




















