インターネット広告やSNSを活用したマーケティングが当たり前となった一方で、ブランドの信頼を脅かすリスクも年々高まっています。
不適切なサイトやコンテンツに広告が表示されたり、意図しない文脈で企業名が露出したりすると、企業姿勢そのものを疑われかねません。
こうしたリスクからブランド価値を守る考え方が「ブランドセーフティ」です。
本記事では、ブランドセーフティの意味や重要性をはじめ、なぜ今求められているのか、具体的な対策方法までをわかりやすく解説します。
広告・広報・マーケティングに携わる方はもちろん、企業の信用を守りたいすべての担当者に役立つ内容です。

ブランドセーフティとは?

ブランドセーフティとは、企業の広告やコンテンツが、不適切・有害・企業イメージを損なう恐れのある媒体や文脈に表示・掲載されないよう管理し、ブランド価値や信用を守るための取り組みを指します。
主にインターネット広告やSNS、動画配信プラットフォームなどにおいて重要視されており、企業が意図しない形でネガティブな情報と並んで露出するリスクを防ぐ役割を果たします。
例えば、暴力的・差別的な内容、フェイクニュース、違法行為を助長するコンテンツの近くに広告が表示されると、広告主である企業も同様の価値観を持っているかのような誤解を与えかねません。
ブランドセーフティは、こうしたリスクを回避し、企業が築いてきた信頼やブランドイメージを維持・向上させるための重要なリスクマネジメントの一つです。

今ブランドセーフティが注目される理由

近年、ブランドセーフティが注目されている背景には、デジタル広告環境の急速な変化があります。
運用型広告や自動配信の普及により、広告の掲載先を細かくコントロールしづらくなり、意図しない媒体やコンテンツに広告が表示されるケースが増えています。
その結果、企業が気付かないうちにブランドイメージを損なうリスクが高まっています。

また、SNSや動画共有サービスの影響力が拡大し、ユーザーの発信内容が瞬時に拡散される時代となりました。
一度ネガティブな文脈でブランド名が拡散されると、炎上や不買運動につながる可能性もあります。
さらに、消費者の企業姿勢を見る目が厳しくなっており、広告の出し方や掲載環境そのものが企業評価の対象となっています。
こうした状況から、単に広告効果を追求するだけでなく、ブランドを守る視点としてブランドセーフティへの取り組みが欠かせないものとなっているのです。

ブランドセーフティの必要性

ブランドセーフティは、単なる広告配信の管理ではなく、企業の信用や社会的責任を守るために欠かせない取り組みです。
広告の掲載環境や文脈を適切にコントロールできていない場合、企業の意図とは無関係にブランド価値が損なわれる恐れがあります。
ここでは、ブランドセーフティが必要とされる主な理由を解説します。

広告の掲載先によるリスク

運用型広告や自動配信では、広告がどのサイトやコンテンツに表示されるかを完全に把握することが難しくなっています。
その結果、炎上しているニュース記事や不適切な内容を含むページに広告が掲載され、企業がその内容を容認しているかのような印象を与えてしまうことがあります。
こうした掲載先のリスクは、ブランドイメージの低下やクレーム増加につながる可能性があり、事前の対策が不可欠です。

意図せず反社会勢力に資金提供するリスク

不正サイトや違法コンテンツを扱うメディアに広告が掲載されると、広告費が間接的に反社会勢力や不正な組織の資金源となる恐れがあります。
企業として社会的責任を果たす上でも、こうしたリスクは見過ごせません。
万が一、資金提供が疑われる事態になれば、法的・社会的評価の低下を招く可能性もあるため、広告配信先の管理は重要な課題です。

メディア毀損

ブランドセーフティへの配慮が不足していると、広告主だけでなく、広告が掲載されるメディア自体の信頼性も損なわれることがあります。
質の低いコンテンツや不適切な情報が多い媒体に広告が集中すると、そのメディア全体の評価が下がり、結果として広告効果の低下やブランド価値の毀損につながります。
健全な広告環境を維持することは、広告主とメディア双方にとって重要です。

ユーザー体験の悪化

ユーザーは、閲覧中のコンテンツと広告の内容や文脈が大きく乖離していると、不快感や不信感を抱きやすくなります。
不適切な広告表示は、ブランドへのネガティブな印象を与えるだけでなく、サービスや商品そのものへの関心低下にもつながります。
ブランドセーフティを意識した広告配信は、ユーザー体験を守り、長期的な顧客関係を築くためにも欠かせない要素と言えます。

ブランドセーフティに関する事例

ブランドセーフティが不十分だと、ブランドの毀損につながる事例が発生する可能性もあります。
ここで、ブランドセーフティに関する事例を2つ紹介します。

YouTubeにおける広告問題

2017年頃、YouTubeに投稿された暴力的なコンテンツの動画に、世界的企業の広告が表示されたことで大きな波紋を呼びました。
例えば、日本を含む世界の大手企業の広告が、イスラム過激派組織「ISIL」の動画などに自動表示されてしまったのです。
これを受け、大手企業はYouTubeへの広告出稿を一時停止せざるを得ない状況になりました。
この問題の原因は広告を出稿した企業側ではなく、Googleの広告配信システムに搭載された自動最適化機能が、暴力・ヘイトスピーチを含む動画を排除しきれず、出稿されてしまったことにあります。
しかし、この問題がきっかけとなり、ブランドセーフティの考えや対策方法などが広く知られるようになりました。
参照元:日本経済新聞「ユーチューブから広告停止相次ぐ 悪質動画に表示で

大手ファストフード店におけるブランド毀損事例

2004年に、監督自らファストフードチェーンAのメニューだけを食べ続けるという映画が公開されました。
あくまで企業を批判するための映画ではなく、実験的な要素を多く含む映画となりましたが、30日間食べ続けたことで体重・体脂肪率の大幅な増加だけでなく、躁うつや脂肪肝の発症など、医師からストップが出るほど健康の悪化が見られたのです。
この映画はサンダンス映画祭での受賞、アカデミー賞でノミネートされるなど、世間からの注目度も高くなり、結果的に「ファストフードチェーンAは健康に悪い」というイメージがついてしまいました。

家庭用品メーカーにおけるブランド毀損事例

国内の家庭用品メーカーでもブランド毀損が発生した事例があります。
2016年に家庭用品メーカーB社の広告が、ヘイトスピーチのコンテンツと共に配信されてしまいました。
これがきっかけとなり、SNSを中心に批判が広まってしまったのです。
この事例の原因となったのは広告配信プラットフォームの自動配信の仕組みによるもので、企業が完全に配信先を管理できていなかった点が挙げられます。
B社はすぐに広告出稿を停止し、管理体制の見直しを図りました。
参照元:日経クロストレンド「AbemaTVの生放送をめぐり、ユニリーバにとばっちり

ブランドセーフティのための対策方法

ブランドセーフティを確保するためには、場当たり的な対応ではなく、組織全体でリスクを管理する仕組みづくりが重要です。
ここでは、実践しやすく効果的な主な対策方法を紹介します。

リスク要因の洗い出し

まず行うべきは、ブランド毀損につながる可能性のあるリスク要因を明確にすることです。
どの広告媒体や配信手法にリスクが潜んでいるのか、過去にトラブルが発生した事例はないかを整理します。
自社の業界特性やブランドポリシーを踏まえてリスクを可視化することで、優先的に対策すべきポイントが明確になります。

ガイドラインの策定・共有

ブランドセーフティに関するガイドラインを策定し、社内外で共有することも重要です。
広告配信の基準や避けるべきコンテンツ、SNS運用時の注意点などを明文化することで、判断のばらつきを防げます。
代理店や外部パートナーにもガイドラインを共有することで、一貫したブランド管理が可能になります。

従業員教育

ガイドラインを整備しても、現場で正しく運用されなければ意味がありません。
そのため、従業員への定期的な教育や研修が欠かせません。
ブランドセーフティの重要性や最新のリスク事例を共有することで、個々の判断力を高め、ヒューマンエラーによるトラブルを防ぐことができます。

ホワイトリスト・ブラックリストの活用

広告を掲載しても問題のない媒体をまとめたホワイトリスト、逆に掲載を避けるべき媒体をまとめたブラックリストを活用することで、広告配信先のコントロールがしやすくなります。
あらかじめ基準を設定しておくことで、不適切なサイトやコンテンツへの掲載リスクを低減できます。
ただし、定期的な見直しを行い、環境の変化に対応することが重要です。

PMPの活用

PMP(プライベートマーケットプレイス)は、信頼できる媒体や配信先に限定して広告取引を行う仕組みです。
公開市場に比べて透明性が高く、掲載環境をコントロールしやすいため、ブランドセーフティを重視する企業に適しています。
品質の高いメディアと直接取引することで、リスクを抑えつつ広告効果を高めることができます。

アドフラウド対策ツールの導入

不正な広告表示やクリックを防ぐためには、アドフラウド対策ツールの導入も有効です。
これらのツールは、不正トラフィックや怪しい配信先を検知・排除し、広告費の無駄やブランド毀損のリスクを軽減します。
ブランドセーフティ対策と併せて導入することで、より安全で健全な広告運用が可能になります。

 

ブランドセーフティは、広告効果を高めるためだけでなく、企業の信用や社会的責任を守るために欠かせない考え方です。
広告の掲載先や配信手法を適切に管理しなければ、ブランド毀損やユーザー離れといった大きなリスクにつながります。
リスク要因の洗い出しやガイドライン整備、ツール活用などを組み合わせ、組織全体で継続的に取り組むことが、安心できる広告運用と長期的なブランド価値の維持につながるでしょう。