ネット上では、SNSや口コミサイト、掲示板などを通じて情報が瞬時に拡散します。
その一方で、事実と異なる内容や悪意のある投稿によって、企業や個人の信用が傷つく「ネット風評被害」に悩まされるケースも少なくありません。
放置すると検索結果やSNSでネガティブな情報が広まり、売上や評判に大きな影響を与える可能性があります。
こうした被害に対しては、削除依頼や発信者情報開示請求などの法的手段を検討することもありますが、弁護士に相談する前に状況整理や証拠の確保など、準備しておくべきことがあります。
この記事では、ネット風評被害に気づいたときにすべき対応や、法的手段を検討する前に行っておきたい準備について解説します。
ネット風評被害に気づいたときに最初に行うべき対応
ネット上で自社や自分に関するネガティブな投稿を見つけると、すぐに削除を求めたり反論したくなったりするかもしれません。
しかし、対応を誤るとさらに拡散してしまう可能性もあります。
まずは冷静に状況を把握し、適切な手順で対応を進めることが重要です。
ここでは、ネット風評被害に気づいた際に最初に行うべき基本的な対応を解説します。
感情的に反応せず状況を整理する
誹謗中傷や事実と異なる投稿を見つけると、怒りや不安からすぐに反論したくなることがあります。
しかし、感情的な返信や拙速な対応は、投稿者とのトラブルを深刻化させたり、第三者の注目を集めて拡散につながったりする可能性があります。
まずは落ち着いて投稿内容を確認し、事実関係を整理しましょう。
投稿が明らかな誹謗中傷なのか、単なるクレームや口コミなのかによっても対応方法は異なります。
また、社内で対応する場合は、SNS担当者だけで判断せず、広報や法務など関係者と情報共有することも大切です。
問題となる投稿の拡散状況を確認する
次に、その投稿がどの程度拡散しているのかを確認します。
特定の掲示板やSNSの投稿だけなのか、まとめサイトや検索結果に表示されているのかによって、被害の大きさや対応の優先順位が変わるためです。
例えば、投稿が一部の掲示板に留まっている場合と、SNSで大量にシェアされている場合では、影響範囲が大きく異なります。
また、検索エンジンで自社名や個人名を検索した際に問題の投稿が表示されるかどうかも重要なポイントです。
拡散状況を把握することで、今後の対応方針を検討しやすくなります。
削除依頼や問い合わせの可否を確認する
投稿内容が明らかな誹謗中傷や虚偽情報である場合、サイトの運営者やプラットフォームに削除依頼を出せる可能性があります。
多くのSNSや掲示板、口コミサイトには、利用規約に基づいた通報・削除申請の仕組みが用意されています。
ただし、すべての投稿が削除対象になるとは限りません。
利用者の感想や評価として認められる内容の場合、削除が認められないケースもあります。
そのため、投稿内容が規約違反に該当するかどうかを確認した上で、削除依頼や問い合わせを検討することが重要です。
必要に応じて、後から弁護士に相談できるよう、投稿内容やURLなどの情報を整理しておくと良いでしょう。
弁護士に依頼する前に準備しておきたい証拠
ネット風評被害について弁護士に相談する場合、事前に証拠や情報を整理しておくことで、スムーズに対応を進めやすくなります。
ネット上の投稿は、削除されたり内容が変更されたりすることも少なくありません。
そのため、問題の投稿を見つけた段階で、できるだけ早く証拠を確保しておくことが重要です。
ここでは、弁護士に依頼する前に準備しておきたい主な証拠について解説します。
投稿内容のスクリーンショットを保存する
まず行っておきたいのが、問題となる投稿のスクリーンショットを保存することです。
投稿内容やコメント、投稿者名などが分かる状態で画面を保存しておくことで、後から証拠として活用できる可能性があります。
ネット上の投稿は、投稿者自身やサイト運営者によって削除される場合もあります。
削除されてしまうと、後から内容を確認することが難しくなるため、発見した時点で画面全体が分かる形で保存しておくことが大切です。
また、投稿ページの上部やURL欄も含めて保存しておくと、どのページの情報なのかを確認しやすくなります。
URLや投稿日時などの情報を記録する
スクリーンショットとあわせて、投稿のURLや投稿日時などの情報も記録しておきましょう。
これらの情報は、削除依頼や発信者情報開示請求などの手続きにおいて重要な手がかりになります。
特に、掲示板やSNSなどでは同じ内容の投稿が複数ある場合もあるため、どの投稿が問題なのかを特定できる情報が必要になります。
URLや投稿日時、投稿者名(表示されている場合)、掲載されているサイト名などを整理して記録しておくと、後から確認しやすいでしょう。
被害状況を整理してまとめておく
弁護士に相談する際には、投稿内容だけでなく、どのような被害が発生しているのかを整理しておくことも重要です。
例えば、売上の減少、取引先からの問い合わせの増加、採用活動への影響など、具体的な影響がある場合はその内容をまとめておきましょう。
また、問題の投稿をいつ発見したのか、これまでに削除依頼や問い合わせを行ったかどうかなど、対応の経緯も整理しておくと相談もスムーズに行えます。
被害状況を時系列でまとめておくことで、弁護士が状況を把握しやすくなり、適切な対応方法を検討しやすいです。
ネット風評被害を防ぐための予防対策
ネット風評被害は、発生してから対応するだけでなく、日頃から予防策を講じておくことも重要です。
ネット上の情報は拡散スピードが速いため、問題が大きくなる前に気づき、適切に対応できる体制を整えておくことが被害の拡大防止につながります。
ここでは、企業や個人が取り組みやすい主な予防対策を紹介します。
SNSや口コミサイトの定期的なモニタリング
まず重要なのが、自社や自分に関する情報を定期的に確認することです。
SNSや口コミサイト、掲示板などでは、知らないうちにネガティブな投稿が行われている場合があります。
定期的に検索して状況を把握することで、問題が小さい段階で気づきやすくなります。
例えば、自社名やサービス名を検索エンジンで調べたり、SNSの検索機能を活用したりする方法があります。
早期に投稿を発見できれば、削除依頼や適切な対応を検討する時間的余裕も生まれます。
日常的なモニタリングは、風評被害の拡大を防ぐための基本的な対策と言えるでしょう。
社内のSNS利用ルールを整備する
企業の場合、従業員のSNS利用がきっかけとなってトラブルが発生することもあります。
個人の投稿であっても、会社名や職場に関する内容が含まれていると、企業のイメージに影響を与える可能性があります。
そのため、社内でSNS利用に関するルールやガイドラインを整備しておくことが重要です。
例えば、業務に関する情報の取り扱い、顧客情報の公開禁止、会社名を出して投稿する際の注意点などを明確にしておくと良いでしょう。
あらかじめルールを共有しておくことで、トラブルの発生リスクを減らすことにつながります。
ネガティブ情報への適切な対応体制を作る
ネット上でネガティブな情報が発信された場合、対応が遅れると被害が拡大する可能性があります。
そのため、問題の投稿を発見した際に誰が対応するのか、どのような手順で対応するのかをあらかじめ決めておくことが大切です。
例えば、SNS担当者だけに任せるのではなく、広報や法務、経営層などと連携できる体制を整えておくと、状況に応じた判断がしやすくなります。
また、必要に応じて専門家や弁護士に相談できる体制を整えておくことで、迅速かつ適切な対応が可能になります。
こうした準備をしておくことで、ネット風評被害へのリスクも抑えられるでしょう。
風評被害を弁護士に依頼した場合の費用相場
ネット風評被害への対応を弁護士に依頼する場合、手続きの内容や難易度によって費用は大きく異なります。
例えば、投稿の削除依頼だけを行う場合と、投稿者を特定して損害賠償請求まで進める場合では、必要となる手続きや期間が異なるのです。
あらかじめ費用の目安を把握しておくことで、弁護士への相談や依頼を検討しやすくなります。
相談料の目安
弁護士に初めて相談する際には、相談料がかかる場合があります。
一般的には、30分あたり5,000円~1万円程度が相場とされています。
ただし、法律事務所によっては初回相談を無料としているケースもあります。
相談時には、問題となる投稿の内容やURL、被害状況などを整理して伝えることで、具体的な対応方法や費用の見込みについて説明を受けやすくなります。
投稿の削除依頼にかかる費用
掲示板やSNS、口コミサイトなどに掲載された投稿の削除を弁護士に依頼する場合、5万円~20万円程度が相場になります。
内容証明郵便の送付やサイト運営者への削除請求など、対応方法によって費用が変わることがあります。
また、投稿数が多い場合や複数のサイトに掲載されている場合は、対応の手間が増えるため費用もその分高くなりやすいです。
事前にどの投稿を削除したいのか整理しておくと、見積もりが出やすくなります。
発信者情報開示請求にかかる費用
投稿者を特定するために「発信者情報開示請求」を行う場合、裁判手続きが必要になるケースも多く、費用は数十万円程度になることが一般的です。
具体的には、30万円~60万円程度が目安とされることが多いでしょう。
この手続きでは、サイト運営者やプロバイダに対して投稿者のIPアドレスや契約者情報の開示を求めます。
手続きは複数段階に分かれることもあり、対応する内容によって費用が変動する点に注意が必要です。
損害賠償請求を行う場合の費用
投稿者が特定できた場合、名誉毀損などを理由として損害賠償請求を行うことも可能です。
この場合、着手金と成功報酬が設定されるケースが多く、着手金は20万円~50万円程度、成功報酬は回収できた金額の10%~20%程度が目安とされています。
ただし、実際の費用は弁護士事務所や案件の内容によって大きく異なるため、正式に依頼する前に見積もりを確認することが大切です。
費用だけでなく、対応実績や相談のしやすさなども含めて総合的に判断すると良いでしょう。
ネット風評被害に気づいた場合は、まず感情的に対応するのではなく、投稿内容のスクリーンショットやURL、投稿日時などの証拠を確保し、状況を整理することが重要です。
被害の内容や対応の経緯をまとめておくと、弁護士への相談もスムーズに進みます。
また、日頃からSNSや口コミサイトのモニタリングや社内ルールの整備を行い、風評被害を未然に防ぐ体制を整えておくことも大切です。
必要に応じて専門家に相談し、適切な対応を検討しましょう。



















