インターネットやSNSが普及した現代において、企業や個人が突然、根拠のない噂や誤解によって評判を落とす「風評被害」に見舞われるリスクは、かつてないほど高まっています。
たとえ事実無根であっても、一度拡散された情報は瞬く間に広がり、信用や売上、社会的地位に深刻なダメージを与えることも少なくありません。
本記事では、風評被害がどのような原因で発生するのかを具体的な事例とともに紹介しながら、そのリスクを未然に防ぐために取るべき対策や心構えについてわかりやすく解説します。
自社や自身を守るためにも、風評被害の実態とその対応策を正しく理解しておくことが重要です。
風評被害とは?
そもそも風評被害とは、根拠のない噂・デマが広まってしまい、企業や団体、個人が経済的または社会的損失を被ることを指します。
例えばある事件が発生し、メディアやSNSなどで本来事件とは一切関係ない企業や団体、個人がピックアップされてしまい、世間に悪い印象をもたらしてしまうケースがあります。
デマ情報が流れてしまうことで周りからの目が厳しくなり、信用も失われてしまうことから、経済的・社会的損失を被ってしまうのです。
特にスマホが普及し、インターネットやSNSが身近になってからは、根拠のない噂やデマだったとしてもすぐに拡散されてしまい、多くの人が信じてしまい風評被害につながるケースが増えています。
誹謗中傷との違い
風評被害と似ている言葉に、「誹謗中傷」があります。
誹謗中傷とは、ある特定の対象に向けて意図的に貶めるような発言や書き込みをすることを指します。
事実とは全く異なる内容やその人に対する侮辱、さらにプライバシー侵害などが誹謗中傷に該当します。
一方、風評被害は特定の対象を貶めることを目的としておらず、悪意ある拡散や間違った善意、無責任な情報の拡散などによって受けてしまいます。
情報を拡散した人は悪意を持っている人もいますが、大半は善意や正義感から情報を拡散しています。
風評被害が発生する主な原因
風評被害が発生してしまう原因として、以下の5つが挙げられます。
・会社が起こした不祥事
・従業員が起こした不祥事
・SNSや自社サイトで不適切な行動をしてしまう
・顧客からの口コミ
・マスコミによる報道
会社が起こした不祥事
会社が不正行為や違法行為などの不祥事を起こし、それが世間で大きな注目を浴びることによって評判や信頼性を損なってしまいます。
例えば商品の品質に問題が見られた場合、消費者からの信頼は失われてしまい、売上の低下に陥る可能性があります。
さらに追い打ちをかけるように不祥事が報じられてしまうと、会社のイメージダウンにつながるケースもあるでしょう。
また、自社と同じ、または似た名前の企業が不祥事を起こした場合、その飛び火で自社にも風評被害を受けてしまう可能性があります。
従業員が起こした不祥事
従業員が不正行為や違法行為を行った場合、企業自体は一切関与していなくても風評被害を受けてしまう恐れがあります。
例えば1人の社員が別の社員に対してハラスメント行為を行っていた場合、会社側がそれに気づいていないと、会社側に対しても悪いイメージを持たれてしまう可能性があります。
会社は従業員を雇用する責任を持ち、適切な研修・指導を行っていくことが大切です。
SNSや自社サイトで不適切な投稿をしてしまう
マーケティング活動の一環として、自社サイトの構築だけでなくSNSアカウントをつくり、運用している企業も少なくありません。
しかし、SNSや自社サイトに投稿する情報の中で不適切な投稿をしてしまった場合、消費者から信頼が失われてしまい、売上低下につながる恐れがあります。
また、投稿内に差別的表現が用いられていた場合、消費者からの信頼に加え、イメージダウンにつながる可能性もあります。
不適切な投稿を防ぐためにも、チェック体制を構築することが大切です。
顧客からの口コミ
自社の商品・サービスを実際に使った消費者は、レビューサイトやSNS、掲示板などで商品・サービスに対する評価・感想を書き込んでいます。
口コミの中で良い評価がされていれば、その口コミを参考にした人が購入する可能性も高まるため、さらなる売上アップにつながります。
しかし、あること・ないことを書かれて悪い評価だった場合、その口コミを見た人は購入を止めてしまい、また企業自体に悪いイメージを持ってしまう可能性が高いです。
実際に悪い部分であれば商品開発で改善することも可能ですが、デマで悪い評価がついてしまうと、企業の信頼性が失われてしまうため注意してください。
マスコミによる報道
テレビや雑誌、新聞、インターネットメディアなど、各媒体が企業に関するニュースを報じたことで、風評被害につながってしまうケースもあります。
特にマスメディアに対して信頼を置いている人も多く、その内容から企業の評判や信頼性は失われてしまうでしょう。
また、マスコミによる報道では事実と異なる内容で報じられたり、変に切り取られたりすることで、情報が歪曲する可能性もあります。
風評被害を受けてしまった場合に起こり得る影響
企業が一度風評被害を受けてしまうと、どのような影響が起こってしまうのでしょうか?
ここで、風評被害を受けてしまった場合に起こり得る影響を紹介します。
社会的信用の低下
風評被害を受けてしまった場合、企業の社会的信用は大きく低下する恐れがあります。
たとえその内容が根拠のない噂やデマだったとしても、多くのユーザーは真実であると認識してしまい、間違った情報が拡散されてしまいます。
それにより、さらなる社会的信用の低下にもつながってしまうでしょう。
低下した社会的信用を取り戻すのは決して容易ではありません。
多くの時間とコストをかけて信用を取り戻していく必要があることから、風評被害は未然に防げるように対策を講じることが重要です。
収益の減少
風評被害の影響を受けると、顧客離れなどが発生してしまい収益の減少につながる恐れがあります。
また、風評被害の影響が広まってしまうと、不買運動に発展するケースもあり、経営基盤を揺るがすほどのリスクを受ける可能性もあるでしょう。
さらに顧客離れだけでなく、市場関係者や卸業者なども消費者からのニーズを想定し、取引の中止や商品価格を下落させるなどの行動に発展する可能性もあります。
採用活動への悪影響
どの業界でも人手不足に悩まされている中で、就職・転職希望者から選ばれる企業を目指していく必要があります。
しかし、そんな中で風評被害を受けてしまった場合、採用活動にも悪影響が及んでしまいます。
現在の就活市場は売り手市場であり、わざわざ評判の悪い企業で働きたくないと考える人も少なくありません。
そうなると求人を出しているのに応募者がほとんどいなかったり、内定を出したのに断られたりして、人手不足の問題が一向に解決できなくなります。
モチベーションの低下
風評被害を受けてしまうと、社内でもネガティブな情報が錯綜してしまい、従業員のモチベーションが低下する可能性があります。
「顧客離れが深刻化するのではないか」「このままだと会社はどうなってしまうんだろう」と不安感が広がり、仕事への意欲が失われてしまいます。
また、直接顧客や取引先からの言葉や態度を受けてしまうことで、精神的に傷ついてしまう従業員もいるかもしれません。
モチベーションが低下していると、生産性やサービスの質まで低下する可能性があるため、注意が必要です。
風評被害の実例
実際に風評被害を受けてしまった企業は、どのような影響を受けてしまったのでしょうか?
ここで、これまでに発生した風評被害の実例を解説します。
地方銀行の事例
当時20代の女性が、「地方銀行が潰れるらしい、明日中に全額お金をおろした方が良い」という趣旨のメールを友人に送ったところ、そのメールを受信した人は他の知り合いにも電話やメールなどで拡散した結果、窓口やATMに長蛇の列ができ、1日で総額450~500億円もの預金の引き出しや解約があったという事件が発生しました。
しかし、潰れるという話は全くの嘘であり、銀行側はすぐに否定しています。
メールを送信した20代の女性は信用毀損罪で警察に告訴されましたが、その女性も噂を信じた結果、友人にメールを送ったということで不起訴処分になりました。
ワクチン入りトマトの事例
これは2021年頃に発生した風評被害です。
この時期は新型コロナ禍の状況にあり、ワクチンに対して反対的な意見を持つ人も多くいました。
そんな中で、ネット上では複数の大手企業が「ワクチン入りトマト流通プロジェクト」を進めており、ワクチン入りのトマトが市場に流通するかもしれないと危惧する投稿であふれました。
名指しで指摘された大手企業は、ワクチン入り流通プロジェクトの存在自体を否定し、デマであることが発覚しています。
しかし、この情報を受け取った人の中には名前が挙がった大手企業に対して、不買運動を呼び掛ける人まで現れました。
アサリ産地偽装問題の事例
アサリ産地偽装問題とは、2022年に農林水産省が全国のスーパーなどを対象に調査した結果、中国産や韓国産のアサリが「熊本産」と偽装されて販売されている可能性があると発表した問題です。
この問題を受け、熊本県は県産アサリの漁と出荷を約2ヶ月間停止しました。
しかし、ここではアサリだけでなく、ハマグリにも風評被害が出てしまいました。
同じ熊本県産ということもあり、国産の天然ハマグリであるにも関わらず、県外の商社から「売れないから」という理由で約2トンものハマグリを引き取ることになったのです。
返品されたハマグリは再び有明海にまき戻されましたが、その後も風評被害の影響を受け続けてしまいました。
風評被害を未然に防ぐための方法
風評被害は一度発生してしまうと消費者からの信用は大幅に下がり、元に戻るまでに時間とコストがかかってしまいます。
そのため、風評被害は未然に防ぐことが重要です。
従業員に対するネットリテラシー教育
風評被害は顧客からの口コミやマスコミによる報道など、外的要素から発生することもありますが、社内から発生する可能性もゼロではありません。
例えば従業員が会社の機密情報をプライベートのSNSで発信してしまい、ネット上で拡散されて混乱を招いてしまう恐れもあります。
そうなると、「大切な情報が漏洩する会社」と風評被害を受けてしまう可能性が高いです。
このような事態を回避するためにも、従業員に対してネットリテラシーに関する教育を行い、情報管理のルールを徹底させることが重要です。
定期的なモニタリング
自社に関してネットではどのように語られているか、評価されているのかを把握することも、風評被害を未然に防ぐために重要な要素となってきます。
SNSやブログ、ニュースメディア、口コミサイトなど、あらゆるプラットフォームで企業や商品・サービスに対し、ネガティブな情報はないか、誤情報が発信されていないかをチェックしてみましょう。
これらの情報をいち早くキャッチすることで、早期に対応でき被害の拡大も防ぎやすくなります。
万が一に備えて弁護士との連携を深める
どれだけ対策を講じていても、風評被害を防ぐことができない場合もあります。
そんな万が一の事態に備えて、問題が発生していない今だからこそ、弁護士との連携を深めていくことが大切です。
例えば信頼できる弁護士と顧問契約を結んでおけば、問題が発生した際にも素早く相談でき、適切に法的手続きを進めてもらえます。
特に、デマ情報を流した犯人の発信者情報開示請求や損害賠償請求などは、弁護士に相談しないと手続きが難しくなってしまうため、今のうちに弁護士との連携を深めておきましょう。
風評被害は、事実に基づかない情報や誤解から突如として発生し、企業や個人の信用を大きく損なう恐れがあります。
特にSNSや掲示板など情報拡散のスピードが速い現代では、その影響はより深刻です。
しかし、日頃から正確な情報発信を心がけたり、万が一の際に備えて対応体制を整えたりすることで、被害を最小限に抑えることが可能です。
風評被害は「起きてから対処する」のではなく、「起きる前に備える」ことが重要です。
リスクを正しく理解し、信頼を守るための取り組みを今から始めましょう。

















