広告を作る際、少しでも自社の商品やサービスの印象を良く見せようと様々な工夫を施している企業は多いです。

しかし、実際よりも良く見せる誇大広告は、消費者に不利益を与える恐れがあるとして景品表示法によって禁止されています。

この記事では、景品表示法の中でも特に注意したい優良誤認について、事例も交えて解説します。

また、混同されがちな有利誤認との違いや優良誤認を防ぐための対処法もご紹介するので、優良誤認の規制に引っかからないためにも、ぜひチェックしてください。

 

優良誤認とは?景品表示法で注意すべき表示

不当表示とは実際のものよりも著しく優良、もしくは有利であると誤解させてしまうような表示のことです。

景品表示法では、消費者を騙すような嘘や誇大な表示は禁止されています。

ここでは、景品表示法の不当表示の一つ、優良誤認について解説するとともに、有利誤認との違いをお伝えします。

 

優良誤認表示とは?

優良誤認とは、商品やサービスの品質を実際よりも優れているようにみせて販売したり、宣伝したりする行為のことをいいます。

 

消費者庁では、以下の項目に該当するものは、優良誤認になるとして禁止しています。

“(1)実際のものよりも著しく優良であると示すもの

(2)事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの”

引用元:

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/misleading_representation

 

なお優良誤認は、故意はもちろんですが誤って表示した場合でも該当すると判断されれば、景品表示法により規制を受けることになります。

 

優良誤認の一例

景品表示法では、商品やサービスを実際よりもよく見せ、品質を誤認させる広告は、消費者が騙され、不利益を被る恐れがあるので禁止しています。

例えば、外国産の牛肉を国産のブランド和牛であると偽って販売するのは、優良誤認に該当します。

また、人工ダイヤをあたかも天然ダイヤかのように表示するのも優良誤認にあたります。

 

有利誤認とは?優良誤認との違い

景品表示法の不当表示には、有利誤認というのもあります。

有利誤認とは、実際はそうではないにも関わらず、あたかもとてもお得かのように消費者に思わせる表示のことです。

 

景品表示法では、以下のように定めています。

 

“(1)実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの

(2)競争事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの”

引用元:

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/advantageous_misidentification

 

例えば、平均価格から値引きをすると言いながら、実際は平均価格よりも高い価格を表示し、あたかも「どこよりも値引きしている」と勘違いさせる行為は、有利誤認に該当します。

有利誤認と優良誤認は、どちらも景品表示法における不当表示の一種で混同されがちです。

しかし、優良誤認はサービスや商品の品質や規格そのものが対象であるのに対し、有利誤認は価格や取引など商品やサービスを入手するまでの過程や経過部分が対象であるという点が明確な違いです。

 

違反した場合どうなる?優良誤認表示を取り締まる不実証広告規制

優良誤認表示を取り締まるため、消費者庁では「不実証広告規制」を設けています。

ここでは、不実証広告について解説するとともに、違反した場合の処罰についてお伝えします。

 

不実証広告規制とは

優良誤認表示の疑いがある場合、事業者に対しその表示の裏付けとなるような合理的な根拠を示すよう、資料の提出を求めることができます。

これを不実証広告規制といいます。

もしも、事業者が何も資料を提出しなかったり、裏付けとなるような合理的根拠を示すことができなかったりした場合は、当該表示は優良誤認表示と見なされます。

 

合理的根拠を示すには

①試験や調査によって得られた結果であること

②専門家や専門機関の見解である。もしくは学術文献である

上記のいずれかに該当する必要があります。

なお、①の場合、正確性や客観性を守るために、学術界や業界で一般的に認められた方法、あるいは関連分野の専門家多数が認める方法でなくてはいけません。

もしも、提出された資料の調査結果が科学的に不正確・不十分だったり、実際の使用環境と異なる条件下だったりする場合、要件を満たしているとはいえないため注意が必要です。

また、②では、例え専門家や専門機関の見解や学術文献であっても、少数だったり、一般的ではない学説に基づいたりしている場合は、合理的根拠を示したとはみなされません。

 

違反した場合どうなる?

景品表示法に違反した場合、「措置命令」「課徴金納付命令」「適格消費者団体による差止請求」の3つのペナルティがあります。

まず、措置命令とは期間内に合理的な根拠が示されなかった場合、消費者庁や都道府県が不当表示を行った事業者に対し、そのような広告表示を辞めるよう命じる制度です。

不当な広告表示をしないよう命じるだけなので、金銭的なペナルティなどは発生しません。

ただし、消費者庁や都道府県のWebサイトにて内容が公表されるほか、自社でも消費者に対し周知しなければならないため、ブランドイメージの低下は免れません。

続いて、課徴金納付命令は、違法な広告によって得た利益を取り上げるといった意味合いを持つ金銭的なペナルティです。

ただし、課徴金納付命令が課されるのは違法だと判断された商品やサービスによる売上げが3年間で5,000万円を超える場合に限ります。

したがって、売上額が少ない商品やサービスは対象外です。

最後は、差止請求です。

国の認定を受けた民間消費者団体は、違法な広告表示を行った事業者に対し、広告を辞めるよう求めることができる制度です。

この制度では、消費者団体は事業者に対し、書面にて違法な広告を辞めるよう求めることができ、それでも事業者が応じない時は、広告の停止を求め訴訟を起こせます。

 

優良誤認表示の対象となる要件を確認!

どのような広告表示をすると優良誤認表示に該当してしまうのか、要件を詳しく解説します。

 

一般消費者が誤解するような表現

一般消費者が誤解するような表現は不当表示となります。

なお、誤解するような表現とは、誤解を招くような表現や言い回しである、事実が伴っていないことなどが該当します。

ただし、景品表示法によって守られるのは一般消費者であり、事業者同士の取引は対象外となるため注意してください。

 

事業者による表示であること

事業者による表示であることも要件の一つです。

なお、一般企業だけでなく学校法人や社団法人など経済活動を行っているものは全て事業者となり、景品表示法の対象です。

 

自社が供する商品やサービス

景品表示法では、他社の為に行った広告は優良誤認表示の対象外とされています。

つまり、優良誤認表示の責任を負うのは、自社の提供する商品やサービスの表示となります。

そのため、アフィリエイターが特定の企業の商品やサービスについて表示を出したとしても、規制の対象外です。

ただし、バナー広告を作成するなどした場合、有料誤認表示の責任を負われることもあるので注意が必要です。

 

上記3つの要件すべてに該当する場合、優良誤認表示の対象となります。

 

優良誤認の違反事例

実際、どのような事例が優良誤認として判断されたのでしょうか。

ここでは、消費者庁が公開している事例を基にご紹介します。

 

【優良誤認表示】あたかもブランド牛のように偽ったケース

牛もつ鍋の詰め合わせ商品に対し、「宮崎牛ホルモン」「宮崎牛ホルモンmix」と記載し、あたかも牛の内臓が宮崎牛であるかのように表示していたケースです。

このケースでは、宮崎牛の銘柄は正肉のみであり、内臓には存在しないこと、そもそも使用されていたのは宮崎牛ではなかったことから、優良誤認表示であると判断され、措置命令が課されました。

 

【優良誤認表示】主原料がブランド米であるかのように偽ったケース

焼き菓子に「あきたこまち米使用純米クッキー」「コシヒカリ純米クッキー」とあたかも主原料があきたこまちやコシヒカリなどのブランド米であるかのように表示したケースです。

このケースでは、商品の主原料は小麦粉であり、上記品種の米粉は極少量しか使用されていなかったことから、優良誤認表示にあたると判断されました。

 

【優良誤認表示】記載された試験内容が虚偽だったケース

粉末飲料にて、「ポリフェノール含有料日本一」「国民生活センター結果レポートより」など、あたかも独立行政法人国民生活センターの試験によって日本一であることが証明されたかのように偽ったケースです。

このケースでは、実際に独立行政法人国民生活センターが対象商品に対し、ポリフェノール含有量を調べる検査を行った事実がなかったことから、優良誤認にあたるとして措置命令が課されました。

 

【優良誤認表示】合理的根拠が示すことができなかったケース

ベランダなどに対象商品を吊るすだけでユスリカやチョウバエなどの害虫を寄せ付けないと思わせるような誇大表現をパッケージに記載したケースです。

このケースでは、表示された範囲や期間、対象商品から放出する薬剤により、ユスリカやチョウバエを寄せ付けないかのように表示されていました。

しかし、表示の合理的根拠を求め資料の提出を求めたところ、裏付けとなるようなデータは認められませんでした。

合理的根拠を示しているつもりでも、不実証広告規制の要件を満たしていない場合、合理的根拠とは認められないことを示す事例です。

 

【有利誤認表示】販売価格をお得かのように偽ったケース

「通常販売価格」として実際の販売価格よりも高い価格を記載し、あたかもお得に購入できるかのように偽ったケースです。

このケースでは、これまでに「通常販売価格」で販売した実績がないことから、実際のものよりも著しく有利であると消費者が誤認するため、有利誤認表示に該当すると判断されました。

 

優良誤認を防ぐためにできること

優良誤認表示に違反すると、措置命令や罰金が科されるだけでなく、企業としての信用を失う恐れがあります。

ここでは、優良誤認を防ぐためにできる対策方法をご紹介します。

 

チェックをする仕組み作りをする

優良誤認を防ぐには、商品表示や広告に問題がないか、チェックする仕組みを作ることが大切です。

表示や表現に間違いがあっても、自分で気づくのはなかなか難しいものです。

優良誤認では、言葉の使い方によっても違法な表示であると判断されることがあるため、第三者がチェックする体制を整えましょう。

この場合の第三者とは、弁護士であることが望ましいです。

難しい場合には、社内の別部署やコンプライアンス部門の担当者に依頼すると良いでしょう。

消費者目線に立った第三者の視点からチェックすることで、気付くきっかけができます。

 

景品表示法の研修を受ける

景品表示法の研修を受けるのも対策方法の一つです。

景品表示法という名前は聞いたことがあっても、どのようなものなのか、どのようなものが該当するのか、きちんと理解している方は少ないのが現状です。

優良誤認と有利誤認の違いや要件を知って理解を深めましょう。

 

合理的根拠を示せるようにしておく

商品やサービスの品質や効果効能を表示する場合、優良誤認表示に該当しないためにも、あらかじめその表示の合理的根拠を示す資料を用意しておくと良いでしょう。

事前に、根拠を示す客観的な資料を準備しておくことで、品質や効果効能に信憑性を持たせられます。

また、消費者庁から資料の提出を求められた場合でも慌てず対処することができるでしょう。

ただし、資料の内容によっては合理的根拠と認められないケースも散見されます。

資料を作成する際は、不実証広告の項目でも紹介した合理的根拠を示す方法を参考にしてください。

 

まとめ

今回は、景品表示法の優良誤認について混同されがちな有利誤認との違いや要件、事例も含めてご紹介しました。

広告を作る際、少しでも商品やサービスを良く見せたいと思うこともあるでしょう。

しかし、実際とかけ離れた内容を表示した場合、不当表示として措置命令が出る恐れがあります。

万が一措置命令が出れば、企業としてのイメージは落ち、消費者からの信頼を失う可能性があるため注意が必要です。

また、優良誤認は故意ではなくても該当することがあるため、広告を作る際は、第三者によるチェックを行うなど、しっかり対策を行うことが望ましいです。